アサイ ユウジ
ASAI, Yuji 浅井 友詞 健康科学部 リハビリテーション学科 教授 |
|
発表年月日 | 2024/06/15 |
発表テーマ | 前庭障害に対するリハビリテーション治療 |
発表学会名 | 第61回日本リハビリテーション医学会学術集会 |
学会区分 | 全国学会 |
発表形式 | シンポジウム・ワークショップ パネル(指名) |
単独共同区分 | 単独 |
発表者・共同発表者 | 浅井友詞 |
概要 | 前庭リハビリテーション(vestibular rehabilitation:VR)は,1940 年代に Cawthorneと Cookseyにより紹介され,一側の末梢前庭障害によるめまいや姿勢不安定性に対して眼球運動や頭部運動,全身のバランストレーニングが含まれていた。それ以降,リハビリテーション医療の一領域として諸外国で追従されている。
めまい症状は様々な原因で発症し,臨床で遭遇する機会が多く,中枢性めまいは前庭神経核から先の前庭神経路の障害による感覚情報間のミスマッチで発症し,末梢性めまいは前庭感覚情報に異常をきたし視覚や体性感覚とのミスマッチが生じることで発症する。今回は,末梢前庭障害のVRについて紹介する。 末梢前庭障害は諸外国においてリハビリテーション医療の対象疾患として多く関わっているが,本邦ではVRの認知度は低い。一方では,日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会,日本めまい平衡医学会を中心にVRの重要性が示され,リハビリテーション医療への期待は大きい。 対象疾患には,良性発作性頭位めまい症,前庭神経炎,メニエール病,両側前庭障害さらに心因性めまい,椎骨脳底動脈症候群,加齢,動揺病,Hunt症候群,起立性調節障害,自律神経障害,頭部外傷などがある。 前庭は平衡感覚器として視覚,体性感覚と共に空間における動的刺激を感知し,姿勢コントロールを獲得する。 前庭機能障害の代表的な評価は,①眼振検査,前庭機能検査(Head Impulse Test,video Head Impulse Test,頭振後眼振検査,温度刺激検査,Vestibular Evoked Myogenic Potential),小脳脳幹機能検査,②障害度判定(Dizziness Handicap Inventory)③静的平衡検査(両脚直立検査,マン検査,単脚直立検査および重心動揺検査(フォームラバー検査含む))④動的平衡検査(足踏み検査,Functional Reach Test,Berg Balance Scale⑤動きの感受性の検査(Motion Sensitivity Quotient:MSQ)⑥移動機能評価(10m歩行速度,Dynamic Gait Index,Functional Gait Assessment,Timed Up and Go Test)がある。 VRは,2016年には米国理学療法士協会からガイドラインが示され,2022年の更新では,前庭機能低下により,めまい・ふらつきおよび視線や歩行の不安定性,空間における姿勢制御の障害を起こし,個人の生活の質,日常生活,運転さらに仕事に悪影響を及ぼす可能性があると記載しており,プログラムは以下の①②③を中心に行う。 ① Gaze Stability Exercises:前庭動眼反射ゲインの回復(頭部運動や素早い眼球運動により網膜上でretinal slipが引き起こされることで小脳や前庭神経核で適応が起こり、retinal slipを減少させる。)前庭機能が低下した場合には前庭機能が回復しなくても,中枢前庭系の機能代償により前庭小脳が亢進した健側の前庭神経核を強く抑制する(前庭代償)。 ② Habituation Exercises:特異的な頭部運動に慣れることにより,めまい症状を減少する。例としてMSQの項目を用いて行う方法がある。 ③ Substitution Exercises:サッケード・追視などの視覚機能,頭部より先に眼球を動かす予測機能,頸椎の固有感覚や足底の体性感覚情報を利用することによる前庭機能の代償などがある。 |