アサイ ユウジ   ASAI, Yuji
  浅井 友詞
健康科学部 リハビリテーション学科
教授
発表年月日 2024/05/19
発表テーマ 前庭機能の理学療法への展望
発表学会名 第31回愛知県理学療法学術大会
学会区分 地方学会
発表形式 シンポジウム・ワークショップ パネル(指名)
単独共同区分 単独
概要 前庭は平衡感覚器として視覚、体性感覚と共に空間における動的刺激を感知し、姿勢コントロールを獲得する。姿勢コントロールは前庭覚、視覚、体性感覚からの情報を中枢で処理し、末梢に伝達する。理学療法では体性感覚を重視したプログラムは散見されるが前庭覚や視覚を融合したプログラムの構築が少ないように感じられる。  
解剖学的に前庭は内耳に位置し、前半規管、後半規管、外側半規管および耳石器で構成されている。半規管はそれぞれ異なる三次元空間で配置され、身体の回転加速度を感知する。各半規管は2脚を有し膨大部を形成する。膨大部には有毛細胞を包むようにクプラがあり、半規管のリンパの流れはクプラを変位させ回転加速度を感知する。一方、耳石器は卵形嚢、球形嚢で構成され炭酸カルシウムの耳石で覆われており、重力を感じ取る。卵形嚢は正中位に対して水平位で水平方向への直線加速度や傾きを感知し、球形嚢は垂直位で上下方向の垂直加速度を感知する。前庭で受けた身体の動的情報は有毛細胞から前庭神経を経て脳幹部の前庭神経核に入る。前庭神経核からは外眼筋や頚部筋、四肢体幹の伸筋を支配し、姿勢コントロールに働く。姿勢コントロールには前庭脊髄反射、前庭動眼反射、前庭頚反射が関与し、小脳、大脳と連携して末梢の機能を促通する。 
理学療法では、外乱刺激に対する歩行、姿勢の変化や眼球の動き、重心動揺を評価し、前庭覚、視覚、体性感覚への入力により動的安定性を獲得する。この前庭を中心としたコントロールシステムの障害や退行性変性等に対してアプローチする。主に対象は前庭疾患、加齢、転倒、スポーツ分野に応用されるが、最近では前庭疾患に対する前庭リハビリテーションが注目されている。そこで、今回の講演では前庭の機能解剖を中心に、評価、理学療法アプローチの一例を紹介する。