タナカ マサヒロ   TANAKA, Masahiro
  田中 将裕
健康科学部 リハビリテーション学科
講師
発表年月日 2025/11
発表テーマ 作業療法士養成課程教育における生活行為向上マネジメント演習のICT化とその効果について.
発表学会名 第59回日本作業療法学会
主催者 日本作業療法士協会
学会区分 全国学会
発表形式 ポスター
単独共同区分 共同
国名 日本
開催地名 香川県高松市
発表者・共同発表者 ◎佐久間大輔,田中将裕,野口貴弘,伊藤竜司,山中武彦
概要 【背景】
新型コロナウイルス感染症の影響により,臨床実習が制限され,学生が現場で実践的な学びを得る機会が減少した.この状況は,臨床教育の新たな方法を模索する契機となった.また,生活行為向上マネジメント(以下MTDLPと略記)の教育では,具体的な生活のイメージを伴った学習が重要である.しかし,紙面学習では臨床を経験していない学生にとって,自由な思考が難しく,学習方法の検討が必要であると考えた.
近年発展した,ゲームを活用した教育は,仮想環境で生活を具体的に捉えることができ,学生に臨場感を持たせながら問題解決スキルを実践的に習得させる手段として有効である.MTDLP教育でも,仮想空間上を自由に移動しアセスメントする事で,紙面学習では得られない深い理解や応用力を養うことが期待される.
【目的】
本研究では,MTDLP教育にゲームを取り入れる事で,学生が実践的な生活課題のアセスメント方法と問題解決方法を学ぶ機会を提供する.この試みを通じて,ゲームを用いた教育(以下ゲーム課題と略記)の可能性とその効果について検討する.
【方法】
本研究では,ノベルゲーム作成ソフト「ティラノビルダー」にて,仮想空間の街を構築した.学生はグループワーク形式でこの街を散策し,症例の希望する生活目標に向けた課題や支援に利用できる地域資源を探索した.その上で,MTDLPの各シートを埋める実習を行った.ゲーム課題前後にてMTDLPの理解度を評価するため,日本作業療法士協会が作成した「2020年度webMTDLP基礎研修の確認テスト」を一部改変したアンケートと,学習動機づけアンケートを実施した.本研究は日本福祉大学倫理審査委員会の承認を得て実施し,参加者には十分な説明と同意を得た上で行われた.
【結果】
対象は大学の学生32名を対象とした.理解度についてのアンケートでは,「課題の優先順位を決定する際の考慮する要因」の項目で,ゲーム課題前後でMann–Whitney U testにて有意差(p<0.05)があり,ゲーム課題後の方が低い結果となった.一方,効果量r=0.234であり,効果は小さい事が示された.その他の項目では有意差は認められなかったものの,ゲーム課題後の数値が低い傾向が観られた.
次に,学習動機づけアンケートのゲーム課題前後の変化では,「非常にそう思う」の選択個数の変化をPearson's chi-square testにて分析した結果,MTDLPの内容に対して興味を持っているか,MTDLPを臨床現場で使用する事を目指しているか,MTDLPを知るために必要な努力を惜しまないか,MTDLPを学ぶことは楽しいと感じるかの項目で有意差(p<0.05)が認められ,ゲーム課題後に増加が認められた.
【考察】
今回の調査では,MTDLPの理解度については,全体としてゲーム課題後で得点が低下した.これは,問題自体がMTDLPの知識を必要とするため,直接的にゲーム課題の内容と一致していないこと,ゲーム課題が臨床に近く自由度の高い構成である結果,混乱させてしまったのではないかと考えた.
次に,学習動機づけアンケートでは,MTDLPを今後も学習し実践して行く意思を問う項目において肯定的な意見の増加が認められた.これは,ゲーム課題は学生にとって馴染みのあるゲーム画面を通して学べる事で,MTDLPへの興味や学習意欲を高める事に繋がったと考えられる.
ゲームを用いた学習は,様々な分野で活用されつつある.今後は,ゲーム課題の中に,MTDLPの基本的知識を問うような課題を入れる等ゲーム課題のさらなる発展を目指したい.